介護を必要とする人々

世界中の人口構成は、20 世紀後半から急速な高齢化現象に見舞われています。特に欧州や東アジアなどの先進地域において高齢化の進展が顕著であり、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国の一つです。高齢化に伴い、介護サービス市場は急速に拡大しています。今後も高齢化の進展とともに、介護サービス需要はさらに増加していくと考えられます。

高齢化の加速

2023 年の人口推計によると現在日本の65 歳以上の人口は3623 万人となっており、高齢化率は29.1% となっています。出生数の低下に伴い、総人口も減少する中で65 歳以上の方が増加することにより割合は年々増加しています。高齢者は、1980 年までは総人口の10%にも及びませんでしたが、将来的に2050 年には37.1% となり、国民の2.7 人に1 人が65歳以上の方になると予想されています。特に85 歳以上の人口は75 歳から84 歳以上の人口を上回る勢いで増加すると言われています。

※出典「 高齢社会白書」 内閣府(2023)

認知症や要介護の高齢者が増加していきます。

世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していきます。


※出典「 介護保険制度をめぐる最近の動向について」 厚生労働省老健局(2022)

年々増加する介護サービス利用者

日常生活において入浴、排せつ、食事、着替え、歩行などの 基本的な動作が困難な方は要介護認定を受けて介護保険サービスを受けることができます。65歳以上の要介護者は第一被保険者として介護の必要度合いに応じ、7段階に区分されます。介護サービスには、訪問介護、施設介護などがあり、要介護度 によって利用できるサービス内容や自己負担額が異なります。

第1号被保険者に占める要介護(要支援)認定者の割合は65~69歳では2.8%であるのに対して、75~80歳で11.1%、85~89歳になると47.4%と年齢が上がることに上昇しています。特に85歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく増加しています。高齢者にとって介護サービスは自立した生活を維持するために欠かせないものとなっています。

要介護者数は年々増えており、2000年から22年間で約3.2倍まで増加、またそれに伴い介護保険サービスの利用者数も22年間で約3.5倍まで増えています。要支援の方の増加が目立ちますが、「日常生活の大部分に介護が必要な状態」である要介護3以上の方も22年間で約2倍以上増えています。特に食事の補助の介護などと違い、入浴の介護はご家族だけでは難しく、介護サービスをご利用される方が多くいらしゃいます。

          (単位:万人)

2000年には256万人→2022年には682万人

22年間で約3.2倍

訪問入浴のご利用者が多い要介護度3以上の方
105 万人→234 万人

22年間で約2.2倍

          (単位:万人)


※出典「 介護分野の最近の動向について」 厚生労働省老健局(2023)

2000年184万人→2022年には592万人

22年間で約3.5倍

中でも在宅サービス利用者は22年間で約4.2倍

在宅介護の現状

在宅介護が主流に

高齢者の増加に伴い施設から在宅へ介護政策が推進されています。また必要な在宅医療・介護サービスが増加した背景もあり、住み慣れてきた自宅で暮らしを続けたい、介護費用が安く済むといった理由から在宅介護を希望する方が増えています。


※出典:「生命保険に関する 全国実態調査」生命保険文化センター(2021)

在宅で介護を受けている方の割合は56.8%、施設利用の方の割合は41.7%と半数以上が在宅介護を占めています。介護を受けている場所はその中でも「自分の家」が40.2%と一番多く、「次いで民間の施設利用」が18.1%、「親や親族の家」が16.6%となっています。しかし介護者は主に要介護者の配偶者やお子様であり、60歳以上の方が多く、老老介護が問題視されています。在宅介護は住み慣れた自宅で生活が続けられ、家族ともたくさんの時間を過ごすことが出来ますが、施設利用者と比べると家族の負担が多くなるのも事実です。

また施設で介護を希望されている方でも、入所対象となる要介護3以上の方で特別養護老人ホーム入居を希望したのに入れない待機者は2022年で25万人を超えています。そのうち在宅で介護を受けながら待機している方は10万人を超えており、在宅介護を余儀なくされている方も多くいらしゃいます。

訪問入浴介護の現状

訪問入浴サービス利用者

訪問入浴介護を利用するためには要介護認定を受ける必要があります。その中でも訪問入浴利用者の多くは要介護3以上の方が多く、要介護度4、5の利用者が約8割を占めています。要介護度が上がるほど訪問入浴介護の利用者数は増加し、重度の要介護者の利用が多いサービスです。


※出典「 訪問入浴介護」 厚生労働省老健局(2023)

訪問介護や訪問看護といった他の介護サービスと比較すると重度の利用者が多い傾向にあります。また要介護1、2の方でも家の設備では入浴できないといった理由から、やむを得ず利用を決める方も多くいらっしゃいます。全体の要介護者(要支援)の中でも要介護度3以上の方は34.5%に上り、訪問入浴事業は今後も需要が見込まれます。

まだまだ足りない事業所数


          (単位:千人)

2001年2021年
訪問入浴139.4141.8
訪問介護991.61530.2
訪問看護344.7874.4
通所介護898.61584.8

2001年から2021年の20年間で訪問・通所介護サービス受給者は大幅に増えています。また近年の感染症のクラスターの影響もあり、自宅で余生を過ごしたいとご希望されている方が急増しており、在宅介護の人気が高まっています。しかし訪問入浴サービスの受給者数は増えていますが、事業所の数は多くありません。事務所数が延びず、訪問入浴市場の開拓が進んでいないのが現状です。
主に訪問入浴を必要とする要介護3以上の方が約234万人いるのに対して、訪問入浴を提供している事業所はわずか1700しかありません。これは1事業所で約1400人もの介護者をみなくてはならない状況だと言えます。
訪問入浴は介護サービス全体の中での介護費用額割合もわずか0.5%と決して高くなく、競合他者が少ない事業です


※出典「 訪問入浴介護」 厚生労働省老健局(2023)
訪問入浴介護1700
訪問介護36400
訪問看護14800
通所介護(デイサービス)24500

2022年時点での訪問入浴の事業所数は他の居宅サービスの事業所数に比べて大差があります。在宅介護が主流になりつつあり、利用者も増加する見込みはありますが、未だ訪問入浴介護への事業参入者は多くありません

  • 入浴車など初期費用が高い
  • スタッフの人材確保が難しい
  • 他の訪問介護系のサービスに比べて認知度が低い

などが考えられます。

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